「とんねるず」の石橋貴明(63)の名前が、フジテレビの第三者委員会による調査をきっかけに再び注目を集めています。
長年にわたるセクハラ疑惑の被害者たちはどのような人物で、どのような被害を受けたのでしょうか。
今回の報道をもとに、被害者の視点からこの問題を詳しく見ていきます。
最新の疑惑:フジテレビ女性社員のケース
2025年4月9日、文春オンラインが報じたスクープによると、10年以上前にフジテレビの女性社員が石橋貴明から深刻なセクハラ被害を受けていたことが明らかになりました。
被害内容: フジテレビの第三者委員会の調査報告書によれば、石橋は飲み会の後、女性社員と2人きりになった際に「突如ズボンと下着を脱ぎ、下半身を露出した」とされています。女性社員は危険を感じてその場を立ち去ったと報告されています。
被害者の状況: この女性社員は、中居正広氏の性暴力問題に関連する調査の中で、別の社員(B氏)から石橋との会食に呼び出されたとされています。B氏はその後、女性を石橋と2人きりにして立ち去ったと報じられています。
反応: この事件について、石橋側は「深酒していたため詳細な記憶はない」としながらも、不快な思いをさせたことを謝罪しています。SNS上では「加害者は覚えていなくても、被害者は一生忘れられないトラウマ」との声が多く見られます。
1992年の訴訟:稲村さち子の告発

今回の疑惑は初めてのことではありません。1992年、石橋は女優の稲村さち子から訴訟を起こされています。
被害内容: 当時56歳だった稲村さち子は、『とんねるずのみなさんのおかげです』で水着姿で出演した際、石橋から「ワキの毛を剃ってよ」「横からアンダーヘアが出ている」などの発言を受けました。さらに、番組では「おばちゃんは素人なので、ムダ毛のお手入れをしていないことをご了承ください」などのテロップが流れ、稲村さんは強い屈辱を感じたと主張しています。
被害者の声: 稲村さんは当時の週刊誌インタビューで「石橋さんはひどすぎます。主役だったら何をしても許されるというのでしょうか。女優としてのプライドも傷ついたし、女ごころも傷つけられました」と語りました。彼女は200万円の損害賠償を求めて訴訟を起こし、後に和解しましたが、その後テレビから姿を消しました。
その他の被害者たち
石橋によるセクハラ疑惑は他にも複数報告されています:
ZONEのMIZUHO: 2002年、TBSの歌番組『うたばん』で、当時15歳だったMIZUHOに対し、容姿を揶揄する発言(局部に似ているなど)を行い、放送倫理・番組向上機構(BPO)からも指摘を受け、TBSが謝罪する事態となりました。
松嶋菜々子: 1994年、コント番組『未来警察072』で、性行為を連想させるポーズを取らせたり、卑猥な言葉を言わせるなどの行為があったとされています。
西内まりや: 2015年10月15日放送の『食わず嫌い王』で、石橋が西内まりやに胸を触ろうとするセクハラ行為を行い、共演していたヒュー・ジャックマンがたしなめる場面がありました。
夕やけニャンニャン時代の被害: 『夕やけニャンニャン』時代には、おニャン子クラブのメンバーに対しても、容姿を揶揄する発言やパワハラ的な行為を行っていたとされています。立見里歌に対し容姿や歌について繰り返し揶揄したり、新田恵利の水着グラビアについて性的なニュアンスの発言をしたりしたと報じられています。
なぜ被害は隠されてきたのか
被害者たちが長年声を上げられなかった背景には、フジテレビの「忖度文化」や石橋の「VIP待遇」があったと報じられています。
パワーバランス: 石橋のような大物タレントへの忖度が強く働いていました。女性自身の報道によれば「石橋は海外ロケでもファーストクラス、スタッフに『うるせえんだよ』と激怒する存在だった」とされています。
キャリアリスク: 特に若手女優やアイドル、女性社員にとって、告発は仕事を失うリスクを伴いました。番組出演はキャリアのチャンスであり、拒否すれば仕事が減る恐れがありました。
稲村さち子のように訴訟に踏み切った人は、結果的に業界から姿を消すことになりました。
時代背景: 昭和・平成の「イジリ」文化の中で、今では明らかにセクハラとされる行為が「お笑い」として許容されていた側面もあります。
社会の反応:被害者への共感と時代の変化
今回の騒動に対するSNS上の反応は、被害者への共感と石橋への批判が主流ですが、一部には異なる意見も見られます:
共感の声: 「被害者は一生忘れられないトラウマを背負っている。加害者の『覚えていない』は責任逃れだ」という意見が多く見られます。
時代論争: 「10年以上前のことを現代の基準で裁くのは行き過ぎではないか」という意見も。タレントの中瀬ゆかり氏は「遡及する傾向に恐怖を感じる」とコメントしています。
被害者の視点から見るハラスメント問題
この騒動は、単なる石橋個人の問題を超え、エンタメ業界の構造的な課題を浮き彫りにしています。被害者たちの経験から学ぶべき点は多いでしょう:
- パワーバランスの問題: 大物タレントと若手スタッフや出演者の間には圧倒的な力の差があります。この不均衡が被害を可能にし、告発を困難にします。
- 業界の「忖度文化」: 視聴率をもたらす人気タレントに対する過度な保護が、被害の放置につながってきました。
- 被害者の心理的影響: 「覚えていない」という加害者に対し、被害者は長年トラウマを抱えて生きていくことになります。
- 時代の変化と責任: 過去の行為も、現代の倫理観から見直され、検証される時代になっています。
まとめ:被害者の声が変える未来
石橋貴明のセクハラ疑惑は、フジテレビ女性社員や稲村さち子、そして名前が明かされていない多くの被害者たちの経験を通じて、日本のエンタメ業界における権力構造の問題を明らかにしました。
被害者たちの多くは今も声を上げることができず、個人情報も明かされていませんが、彼女たちの被害は「忘れられないトラウマ」として残っています。
石橋の「覚えていない」という謝罪は、被害者の心情を考慮したものと言えるでしょうか。
この騒動が、エンタメ業界におけるハラスメントをなくすきっかけとなり、被害者の声が尊重される環境づくりにつながることを願いたいものです。
昭和・平成の「イジリ文化」から脱却し、すべての人が尊厳を持って働ける業界へと変わっていく転機となるかもしれません。